つい手に取ってしまった!:『「ついやってしまう」体験の作り方』を読んでみた
たくさんの人が知っているゲーム、「スーパーマリオ」や「ドラゴンクエスト」などを題材にし、「どうやったら人の心を動かす体験をつくりだせるか」、その方法が紹介されています。
著者の玉樹真一郎さん(@tamaki_wakaru)は、任天堂の「Wii」の企画担当として、最も初期のコンセプトワークから手がけており、「Wii のエバンジェリスト」「Wii のプレゼンを最も数多くした男」と呼ばれています。
「ついやってしまう」体験のつくりかた 人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ
- 作者: 玉樹真一郎
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2019/08/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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目次
- 第1章: 人はなぜ「ついやってしまうのか」 - 直感のデザイン -
- 第2章: 人はなぜ「つい夢中になってしまうのか」 - 驚きのデザイン -
- 第3章: 人はなぜ「つい誰かに言いたくなってしまう」のか - 物語のデザイン -
- 終章: 私たちを突き動かす「体験→感情→記憶」 - 体験デザインの正体 -
- 巻末1: 「体験のつくりかた」の使い方(実践編)
- 巻末2: 体験デザインをより深く学ぶための参考資料
概要
第1章では、ユーザーが自発的に直感的に行動・学習することを助け、「ついやってしまう」体験をデザインするための手法が紹介されています。下図のような「スーパーマリオ(?)」や「ゼルダの伝説」を題材にしています。
第1章で紹介された「直感のデザイン」には、「連続すると疲れや飽き」がくるという弱点があります。それに対処するため、第2章では、「つい夢中になってしまう」体験に必要な「驚きのデザイン」の手法を紹介しています。「ドラゴンクエスト」が題材にされていて、ぱふぱふにはそんな本質があったのか!とまさに驚かされます。
第3章では、直感や驚きのデザインによる体験に意義がなければ、ユーザーの心を動かすことができません。体験に意義を与える「物語のデザイン」の手法が紹介されています。
ユーザーに寄り添うことの本質
仕事で、「ユーザーに寄り添って考えよう」とは言いますが、具体的にどうすればユーザーに寄り添うことになるのか、「こうすればいいんだ!」という答えを持っていません。
著者は、この問題に対する回答として、以下のようにおっしゃっています。
ユーザに寄り添うためには、ユーザがたどる「わかる」→「良い・正しい」という体験の順番に合わせて優先度を決めなければいけません。商品やサービスの「良さ・正しさ」を伝えるよりも、まずは商品やサービスとの関わりかたが直感的にわかることを優先すること。これこそが「ユーザに寄り添う」の本質だと考えます。
ユーザーの課題を解決するための機能があればよい、というだけでは「ユーザーに寄り添う」とは言えないのかもしれません。
先日(9/12)参加した DevLOVE イベントのお話の中にあったのですが、課題解決もできるし検証も大丈夫なはずなのに、ユーザーは飛びつくほどの反応ではないことがある、と。そんな時は「アテンションにあたる価値がない」のかもしれない、と。
この「アテンションにあたる価値」を上げるために、ユーザーが直感的にわかりやすいもの、「これをこう動かしたらこうなるのかな?」という仮説を立てやすいデザインをする必要があるんだなと感じました。たまたま最近はプロダクトの一部の企画をやっていることもあり、「良い・正しい」ことよりも「わかる」にはどうすればいいか、突き詰めていきたいと思いました。
(メモ)気になったコトバたち
人生を突き動かすもの
「体験 → 感情 → 記憶」という流れが、常に私たちの人生を突き動かしています。この流れを逆にたどると、こうもいえます。あなたが今記憶していることは、あなたの感情を強く揺り動かした体験だったはずだ、と。
本書ではこうも書かれています。「自身の記憶をたどり、感情を確かに突き動かした体験=記憶を土台にし、無数の人々の心を動かす体験をデザインしていけばいい」、と。この体験をデザインすることは製品開発だけではありません。仕事などの実生活においても応用が効き、以下の具体的なテーマに分けて解説されています。
- 考える / 企画
- 話し合う / ファシリテーション
- 伝える / プレゼンテーション
- 設計する / プロダクトデザイン
- 育てる / マネジメント
ここでは、「よい企画の出し方の方法」といったことではなく、「つい企画を考えてしまう、考えることに夢中になってしまう」といった体験をつくるためにはどうしたらいいか、ということが紹介されています。
製品に対してだけでなく、実生活への「デザイン」をしていくことは非常に難しく感じますが、「人の心(感情)を動かす」にはどうしたらいいのかを考えていきたいと思うようになりました。
(余談)
本書に書かれていることは、組織開発、人材開発、いわゆる人事の業界にも通ずるものがあるのかな、と感じました。人の気持ちや性質を考えることが重要だったりするところが同じなのではないかと。なので人事制度や評価制度などに本書の「デザイン」を適用できないか考えるのもおもしろいのではないか、と思いました。