あらゆる混乱を解きほぐして整頓(センスメイキング)するためには!?:『今日からはじめる情報設計』を読んでみた
最近,ワイヤーフレームを作っています.私はどちらかと言うと,サーバーサイドのエンジニアです.ワイヤーフレームを作ったことなどなく,「え?いわゆる Web サイトのデザイン前の下書き的なもの?」くらい思ってました.そこで,ワイヤーフレームにつていググってみると,以下のサイトを見つけ,「ワイヤーフレームは,情報設計をするためのもの」ということを知りました.
「情報設計」という言葉を聞き慣れておらず,まずは勉強しようと思い購入した本がこちらです.
今日からはじめる情報設計 -センスメイキングするための7ステップ
- 作者: アビー・コバート,長谷川敦士,安藤幸央
- 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
- 発売日: 2015/10/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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目次
- 第1章:混乱を見極める
- 第2章:意図を表明する
- 第3章:現実を直視する
- 第4章:方向を決める
- 第5章:距離を測る
- 第6章:構造で遊ぶ
- 第7章:調整に備える
情報設計とは・・・?
ある一連のコンセプトのことです.誤った情報や偽りの情報,十分ではない情報や多すぎる情報によって引き起こされる混乱に対し,あらゆる人がその混乱を「解きほぐして整頓(センスメイキング)」できるよう,手助けとなるものです.
混乱を解きほぐして整頓(センスメイキング)
「第1章:混乱を見極める」で,混乱の大きさと深さを見極めることがどうして重要なのか述べられています.混乱とは,何かがわかりにくく困難を極めているあらゆる状況のことを指します.日常生活の中で取り組む混乱には,以下のようなものがあります.
- チームや組織の構造
- 共同作業への取り組み方
- 製品やサービスの説明 / 販売 / 配送方法
- お互いのコミュニケーションの取り方
あらゆる混乱に対処するための最初のステップは,混乱の大きさと深さを把握することです.読者自身が直面している混乱を見極めるため,どのように自身へ問いかけたらよいかヒントが書かれています(以下は一例です).
- ユーザー:あなたが対象としているユーザーは誰か?
- ステークホルダー:彼らの期待していることは何か?
- 情報:あなたはどんな解釈を行なっているか?
- 現在の状態:あなたが対処しようとしているのは,情報過多,情報不足,適切でない情報,あるいはこれらの組み合わせか?
「良い」とは何か?
私たちの意図することが,「良い」や「悪い」といった単語の定義の仕方を決めるのです.「良い」情報設計を実践するためには,良さの意味を定義しなくてはなりません.
ラスベガスのカーペットを例に,「良い」と「悪い」についてこう書かれています.
- 多くのデザイナーはゴテゴテとした模様を「けばけばしい」と評価する
- 頻繁にカジノを訪れる人は「美しい」と評価する
ゴテゴテ模様のカーペットを選択する理由は,飲み物がこぼれたり客が歩いて擦り切れるのを目立たなくするためです.ギャンブルをする人にとって,自分たちが楽しくやっていることと結びついているカーペットのデザインは楽しいもので,オーナーや客にとっては,そのデザインは「良い」ものです.デザイナーにとっては「悪い」ものです.どちらが「正しい」とは言えず,どちら側にも意見があります.
(想像以上にけばけばしかったカーペット…)
私は,BtoB のサービスを作っていて,使っていただく企業の中には,人事,経営層,管理職,従業員,など,様々な立場の方がいます.立場によって「良い」ものが異なってくることもあります.1つのサービスを作る上でも,様々な立場の視点が必要になり,混乱の元になってしまいます.そうならないためにも,「誰」にとって「良い」ものなのか,これをきちんと定義していくことが大切なんだなと感じました.
フィルターになろう.コーヒーかすではなく
コーヒーを淹れる時,フィルターの役割はコーヒーにコーヒー豆を残さないことです.同様に,センスメイキングとは,ユーザーに提供しようとしているアイデアから,余計なものを取り除くようなものです.
ここでは,単にアイデアを持ち込むだけの人にならず,他の人たちのアイデアを漉(こ)して,それが飲めるようにする人になりましょう.以下のようなスキルがあると,常に引く手数多でしょう,とあります.
- 人々が目にしていても話題にはしない混乱に着目しよう
- 共に行なっている作業の背後にある意図について,誰もが同意していることを再確認しよう
- 人々が方向を定めるのを手伝い,進捗度を測るためにゴールを設定しよう
- ゴールへ到達するために用いる言葉や構造を評価し洗練させよう
引く手数多かはわかりませんが,これらのことは仕事をする上で,とても重要なことだと思いました.日々の仕事には,色々な人の考えや意見によって,かえって混乱し,なかなか先に進まない状況や,そもそも何をゴールにしたらいいのか分からない状況もありえます.その中でも,まず実現したいことは何か(ゴール)を定め,それに向かってどれくらい前進できているかの基準をどのように定めるのかが大切なことだと思いました.
最後に
「情報設計」の専門的なことを学ぶ,というよりも,仕事をしていく上で重要なことを学んだ気がします.日々,考えなければいけないことが多く,モヤモヤしてしまいそうな時に手助けしてくれるような本でした.